園児は騒音?/保育公定価格試算ソフトの混乱/「保育園開業・集客完全マニュアル」

 園児は騒音?

 保育園建設に反対する住民たちのことがNHKのクローズアップ現代で報道されていました。保育園の幼児たちの声は騒音だと老人たちが言うのです。確かに、幼児をこんな風に集団にするのは不自然なのです。しかし、幸せそうに生きる子どもたちを「騒音」と感じるような社会にしてしまっているのは一体誰なのか、何なのか。戦前の道徳教育を受け、ある時期「絆」を強く感じ合う体験をした人たちが、なぜこんなことを言うようになったのか。社会全体の幼児を見る視線、視点、意識が変わってきているのです。それが世の中の空気感を変えている。最近よく道徳教育という言葉が言われますが、道徳とは社会の空気感の中で主体的に維持されるもの、またはその空気感そのものではないか、と思います。流動的で、常に作用反作用で動いてゆく、人々の意識の連動のような気がします。

 子どもを40万人保育園で預からないと女性が輝けない、と政府が言う。

 親を育て、人間性が共感する次元を整え、社会に絆を生み出すために存在する子どもたちを、大人を輝かせない障害と見なすようになっている。その奇妙で不自然な視線が少しずつ重なりあって、今の社会全体の意識を作ろうとしている。確かに新生児は人間から自由を奪うために産まれてきます。自由を奪われ、自由を捧げ、絆をつくり、人間は一人では生きられない自分に幸せを感じ成長した。そこで育まれる「利他」の心が、社会にモラルと秩序を与えてきた。

 本来幼い子どもたちをたくさん集めて一緒に生活させることは不自然なのですが、その音が不快に思えるようになってきた。マスコミとか政治家とか、社会の意図を左右する仕組みが、弱者の役割りとその願いを理解しないから、その無理解が意思となって伝わって行き、「弱者の幸せ」が騒音に聴こえるようになる。夏の蝉の声は苦痛ではないのに、深層心理の次元で「幸せの音」が苦痛になってきている。

 一日保育者体験をした親たちの感想文を読むと、たった8時間幼児たちに囲まれることによって人間の感性がずいぶん変わることがわかるのです。遺伝子がオンになってくる、という感じでしょうか。言い換えれば、それまでどれだけオンになるべき遺伝子がオンになっていなかったかがわかるのです。

 

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 筑波大名誉教授の分子生物学者、村上和雄氏の「生命の暗号」という本に、遺伝子がたくさんオンになるほど良い研究が出来る、感性が磨かれる、と書いてあります。そして、遺伝子をなるべくオンにするには、感謝すること、Give&Giveの気持ちで生きること、その典型が乳児を育てる母親、と書いてあるのを読んで、感動したことがあります。

 

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 男が授乳できれば結構遺伝子がオンになるのでしょう。そんな風に考えたことがあります。しかし、それは宿命的に無理なのです。男女は陰陽の法則のなかで助け合うために相対的、必然的発達障害の関係にある。今の世の中、昔は当たり前だった、父親が乳幼児を日々抱いて遺伝子をオンにする時間が極端に短くなっています。だから年にたった一日、八時間でもいい。父親を人間らしくする一日保育士体験を薦めています。

 「親心を育む会」のホームページに父親たちの感想が数百載ってます。人間が変質する瞬間が見えます。とても、効き目があります。

 経済競争というパワーゲーム(マネーゲーム)に組込まれた子育ての社会化が、親らしさで心を一つにする(男女の差異を調和に発展させる)部族の定義を揺るがしています。

 最近陰のベストセラーになっている「逝きし世の面影」渡辺京二著の第十章、(子どもの楽園)を読むと、150年前、幼児を崇拝し眺めながら楽しそうに生きていた日本人たちの安心感と笑顔が、それを書いた欧米人の魂を揺さぶった瞬間が見えてきます。インドや中国をすでに見て知っている欧米人が、なぜこの国を「パラダイス」と書き残したか。貧しきものは幸いなれ、と言った聖書の言葉が、幼児を中心に生きることでいとも簡単に具現化されることに気づいたからだと思うのです。

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 第十章だけでもいい、生きる力を失いかけている中学生、高校生に本当の日本の歴史を知らせるために読んであげて欲しい。男たちがこれほど幼児と一体となって暮らしていた国はない。百五十年前にこの地に来た欧米人が時空を越えて私たちの本質を知らせようとしています。

 貧しい人たちも輝いていた。これが誇るべき、自慢すべき、日本の姿のはず。この章と保育体験の組み合わせで、きっと生徒たちには伝わるはずです。生きることの意味が。

 

 子育てに幸せを感じ、心を一つにし、人々が安心すると、競争が止まり今風の経済は減速するのかもしれない。しかし競争の対極にある幸福観を持つのがこの国の個性ではなかったのか。

 

保育公定価格試算ソフトの混乱

 

 消費税を上げるのか上げないのか、政府が揺れ始めている。進むも地獄、返すも地獄と報道されていましたが、保育界は過去例がないほど混乱しています。そんな中、コンサルティング会社が元気です。仕組みの抜け穴を読み解きコンサルティング料を取って、保育でいかに儲けるかを指南しています。子どもたちのための保育が、ビジネスチャンスとしての保育に変えられ、そして「保育園開業・集客完全マニュアル」(後述)なるものまで現れる。今まで積み上げて来た保育の伝統とは何だったのか。ここまで来ると新規事業の最前線では、乳幼児の命、そして子どもたちの人生を左右するはずの幼児期の子育てが変質し、保育の無法地帯化が始まっている。

 

 来年四月から始まる子ども・子育て支援新制度は消費税が10%に上がる前提のもとに「前倒し」で進んでいます。消費税を上げるためのスケープゴートに使われたのかもしれない。保育園、幼稚園、認定こども園各種、小規模保育、家庭的保育事業、一号認定、二号認定、三号認定、何人ずつ子どもを預かればどれだけの補助が出るのか、計算するソフトが内閣府のページからダウンロード出来るのですが、6月のバージョンには問題があって8月に新たなバージョンが出来、それを使いながら園長設置者たちが本当はよくわからないまま損得勘定で決断を迫られ、十月の募集に間に合わせるために役場も条例の改定、市議会での決議、と五里霧中、指示されるままに進んできてしまいました。

 そしていま、国の「子育てしやすい国づくり」が「待機児童の解消」=「保育園を増やすこと」とする考え方に、日本人が違和感を覚えなくなっている。

 

 だから、「子育て」に直面している保育士が自己矛盾を感じ始める。(そして、園児が騒音と見なされるようになっている。)自分たちが、一歳児なら園児6人に保育士1人、4、5歳児だと30対1でやるのが本当に「子育て」なのだろうか。そして、「子育てしやすい」の「しやすい」という言葉の中身を考えて立ちすくみます。自分たちが頑張ることが、「子育て放棄しやすい」を意味しているのではないか。その疑問と葛藤が保育の現場の根本に芽生えたから、新制度はいくら継ぎはぎの修正をしても、迷走を続けるしかないのです。

 

 幼稚園と保育園は仕組みの成り立ち、意図が違います。安易に一体化しようとしても、民主党の「子ども・子育て新システム」から続く主旨の姑息さが必ず現れる。いくら計算ソフトの改訂をしても、紆余曲折の後、結局は、長年かけて作られた仕組みに戻るしかなくなってくる。いま意識の転換をしても、どこまで戻れるがわからりませんが、しかし、これを前倒しで進めている政治家と行政は意地でも戻ろうとしない。

 

 少し専門的なテーマになってしまいますが、

 私立の90人定員の保育園がこども園に移行し、一号認定(幼稚園並み保育時間)の子どもを15人にすると、地域やこれから決まる公定価格によって多少差がありますが年間二千万円くらいのプラスになります。いくつかの自治体に試算をしてもらいましたが、15人という数字がマジックナンバーになっている。この仕掛けを知っている園もあれば、知らない園もある。気づいた役人は震え上がり、知らない役人もいる。

 こども園に移行させるために、ここまで税金をインセンティブに使う政府の理念と哲学が見えません。介護保険のように市場原理で財政削減に結びつけようとしているのか、保育園と幼稚園の間にある子育てにおける差別感をなくそうとしているのか、単なる設定上のミスなのか、いずれにしても子ども優先の施策ではない。こんなやり方は明らかに財政的に続かない。自治体が負担分に耐えられなくなる。

 東京都は元々国の補助以外に保育園には多額の手当が出ていて結果的に加算にはならないので関係ありません。公立も一般財源化されているので無関係。2号3号ですでに待機がいる地域では一号認定を加えようとしても市の認定が降りないのかもしれない。しかし地方の、待機児童がいなくて幼稚園がないような地域(全国で2割、人口一万人以下の自治体では5割)では、園児の3割くらいが本来は一号認定に入るべき子どもたちで、在園児の15人に一号認定になってもらいこども園に移行することは充分可能です。これをすれば保育士一人月額5万円くらいの加算になるかもしれない。こども園という「幼稚園のいいところと保育園のいいところを合わせて」という政府がいまだに言い続ける仕組みの理念は、保育士不足の現実から考えると机上の空論だとしても、保育士の待遇の悪さに心を痛めている園長・設置者にとって年二千万円は魅力です。この加算の仕組みが、もし一部の人たちにだけ意図的に知らされていたとしたら、保育施策を覆すスキャンダルです。

 

(関連して、ある市の課長から)

 当市では、子ども・子育て支援法第28条第1項第2号の「特別利用保育」を利用する子どもの受け入れを決定していますが、国からの情報がありません。保育所の公定価格試算ソフトに特別利用保育の項目を入れる等の対策を講じていただかなければ、認定こども園と保育所の比較を正確に行うことは困難です。至急対応いただきたい課題です。

(「特別利用保育」は保育園に一号認定の子どもを入れてゆく仕組みで、もともと幼稚園が無いような自治体で、いい課長が「子どもは親と過ごしたがっている」と考える時に、従来疑わしい就労証明書で受けていた子どもたちを本来の一号認定に戻してゆく場合に有効な手段です。この市では公立保育園がほとんどなので、条例を作り市の指導でこういう施策が可能です。私立保育園が予算獲得のために認定こども園になり一号認定を十五名入れれば大きな加算となるのに、公立保育園が、親の必要な時間だけ預かるという保育園の本来の姿に立ち返るために進める良心的な手段における補助金の算定が公定価格試算ソフトに入っていない。付け焼き刃の施策の盲点や矛盾点、バグがますます明らかになってきます。)

 

 

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 家庭の問題を理解し親身にならざるを得ない園長先生は、卒園式の日に園児をそっと送り出す。祈るような気持ちで...、背中を押す園は子育てをしている。子どもたちにとって家庭であって、ただ預っている場所ではないから、その気持ちが親に伝わらないことに傷つく。

 良くない事件が起こると、どこかに身を凍らせている園長を感じる。

 

 

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(保育行政を超えて児相や児童養護施設まで関わり、凄い行動力で、親身に動き続ける女性の役人からメールが着ました。児童虐待を止めるために、家の前で張り込みをするような女性です。)

 

こんばんは。

あすは、市長と市議選のダブル選挙です。

保育園のお迎え時間に、門扉の前でビラ配り。節操のない状態に心が痛いです。

これまで保育に全く関心のなかった市議でさえ、初当選から保育の問題を説いてきた!と言います。(これを偽りと云わずして何を偽りと云うのでしょう)

どんな結果になっても、保育を政治的な判断で決めない人であってほしいと思います。

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松居様

 

いつもTwitterを拝読しております。

私は都内北区在住の3歳と1歳の男の子を持つ母親です。

松居様のTwitterを知り、ご本も読んで勉強させて頂いております。

本日の日本経済新聞夕刊一面に、

「都立公園内に保育所・東京都が待機児童解消策」と言う記事がありました。公園を潰して保育所を建てるとあるのです。悲しみと同時に薄気味悪さを感じました。子供達が、母子が集う、近隣住民の憩いの場を潰して保育所を建てると言うのです。そこまでして母子を引き離そうとする薄気味悪さ..もし可能ならば松居様のTwitterなどにご意見を発信して頂きたい

そう思い、非礼とは思いましたがメールさせて頂きました。

私は会社員で、3歳の長男を一歳から保育所に預けました。育児休暇は一年間。預ける事になんの抵抗もありませんでした。当然と思いました。ですが次男の育児休暇の今、とあるブログをきっかけに思いを改め、そして松居様や長田先生のご本を読み、変わりました。仕事を辞め、子供を自分で育てようと言う考えに変わりました。今は、このままでは日本の母親は産んだ子供は保育所に預けるのが当たり前になってしまうのではと、怖くなります。今日の様な記事を見ると

自分の事しか出来ない一般人の私です。松居様に日本のお母さんに気付きのきっかけを作って頂きたい。そう思い、メールさせて頂きました。どうかよろしくお願い致します。

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 お手紙ありがとうございます。とてもよくわかります。社会全体が、何か肝心なものを忘れて、当たり前のように、後戻り出来ない方向へ進んで行きます。

 必ず母親たちの心のブレーキがかかると信じて、書いたり、講演したりしています。そうするしかありません。ですから、こういうお手紙をいただくと嬉しいのです。少しずつ、気づけばいいだけなのだ、と思います。

 仕組みの状況に関しては、どの部分から変わり始めるのか、どの部分から手を付けられるのか、ちょっとわからないほど保育界全体が追い込まれている。虚しいくらいの状況ですが、頑張ります。もし、私にできることがありましたらおっしゃって下さい。講演でよければ行きます。大切なのは、母親たちが声を上げることだと思います。幼児のためにはそれが一番自然で、効き目があると思います。

 

松居

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(ある役場の人からのメール)

消費税の引き上げと子育て新法案について

今年の4月から、消費税が8%になっことに伴い、臨時特別交付金及び子育て世代特例給付金が支給されました。このロジックに国民は騙されてはいけません。お金をばら蒔いて、誤魔化してるとしか思えないのです。介護保険がはじまった2000年、その前年の1999年、当時の小渕内閣が行った地域振興券。これは、15才未満を持つ世帯に金券千円をこども一人あたり2万円分支給したもの。40才から介護保険料の負担を強いる前にバラまいたとしか思えません。消費税10%引き上げを目前に控え、またバラまき政治と思えるのは私の歪んだ感性からでしょうか?

 介護保険法と子育て三法案。

おなじ厚労省がやっていることとはいえ、ロジックが似すぎています。介護保険料は5年おきに改定。国民の負担は増えるばかりです。これも最初から引き上げねらいでしたから、あくどいですね。子育て政策も、今はおいしい事をいっても、梯子をはずされるのは目にみえています。保育園・幼稚園経営者の先見の明を望みます。

追伸

今月臨時国会で可決した「女性活躍推進法」()について。ゆっくり和先生とお話ししたいです。

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(園長先生からのメール)

船井総研に次いで、どしどしビジネス保育の営業が増え始めましたね。安易に保育を始め、事故や問題おきたら逃げてしまうんでしょうね。事故というより刑事事件であることも理解しないままに。

 http://www.info-studies.com/hoiku-top/

 小規模保育がターゲットだそうです。

 

(内容は)

「保育園開業・集客完全マニュアル」

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 *フランチャイズは失敗してもFC料金を払わなくてはならないのが不安だ。

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そこで、「保育園開業・集客完全マニュアル」をあたなにお届けいたします!

1つのご提案として、本マニュアルには、今まで保育園経営などにまったく興味のなかった方にも一からご理解いただけるようにわかりやすい手順が説明されています。保育園開業・集客完全マニュアル」をお読みになった方は、そのほとんどが興味を持たれ、開業されたオーナー様も多くいらっしゃいます。勇気をもって新たな一歩を踏み出すお手伝いをさせていただければ本望です!

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(私の意見:保育は「何から、どう始めていいかわからない」人、「今まで保育園経営などにまったく興味のなかった方」がマニュアルを読みながらやる仕事ではないはず。こんなことが市場原理として政府によって推し進められているのです。だから保育園が騒音に聴こえてくるのです。)

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