常識として知るべき、親たちに知らせるべき、乳幼児保育施設の現況

認可外保育施設の現況

 

 雇用均等・児童家庭局 保育課による報道機関に対するプレスリリース、「平成25年度 認可外保育施設の現況取りまとめ」〜施設、入所児童数ともに増加、ベビーホテルは減少〜 http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000080127.html、を読みました。

 平成25年度、ベビーホテルの新設・新設把握158カ所、廃止・休止158カ所。その他の認可外保育施設は新設・新設把握474カ所、廃止・休止331カ所とあります。これを、「ルポ 保育崩壊」(岩波新書)で語られる保育の質の低下の実態と照らし合わせてほしいのです。以前、著作に書いたことがあるのですが、なぜこれほど新設と廃止が多いのか。この仕事は、単なる思い込みや儲け主義では成り立たない、幼児の成長や家族の人生に関わる仕事です。だからこそ計画通りにはいかないし、人材が集められなければやってはいけない。コンサルタント会社が儲け話として煽るような種類のビジネスではない。(http://kazu-matsui.jp/diary/2014/11/post-193.htmlhttp://kazu-matsui.jp/diary/2015/01/post-261.html

 「把握」ということばが使われているのは「把握」していない状況がかなりあるということではないか。コンビニならまだしも、保育施設がこれほど継続が不安定な状況でいいはずがない。なぜそうなるのか。5年ほど前から保育界を追い詰めている慢性的な保育士不足を考え合わせれば、そこに明らかな無理と不自然さが読み取れるのです。保育所はどんな形であれ、日々の乳幼児の成長、そして日本の未来に関わる重要な施設なのです。

 もっと驚くのは「立入調査の実施状況」です。

 ベビーホテルの未実施数が26%、その他の認可外も26%。繰り返し全国紙で事故や事件が報道されているのに、未だに「未実施」がこれだけあるなどあり得ない話です。不手際というより、政治家やマスコミの怠慢。幼児に対する人権侵害ともいえる、あまりにも雑な保育行政です。国の安全保障については毎日報道されるのに、乳児の安全保障に関しては以前からずっとこんな状況です。政府の「あと40万人3歳未満児を保育施設で預かれ、そうすれば女性が輝く、活躍できる」という施策に水を差したくないのでしょう。

 保護者たちに知ってほしいのは、この報告書に、立入調査を行った施設に関して、指導監督基準に適合していないもの、ベビーホテルが50%、それ以外の認可外保育施設が37%と書いてあること。それに対する指導状況は口頭指導文書指導がほとんどで、公表:0か所、業務停止命令:0か所、施設閉鎖命令:0か所です。こんな状況だから、ルポ 保育崩壊で報告されているようなことが起っているのです。

 保育園に対する行政の立入り調査は抜き打ちではありません。前もって準備や手立て、隠蔽が可能な立入り調査です。調査官の目の前で子どもを叩いたり怒鳴ったり、口に給食を押し込んだりする保育士はいない。つまり保育の実態は、事実上ほとんど把握できていないのです。それでも確信犯的に乳幼児の日々の安全、安心を脅かす違反がこれだけあって、公表も業務停止命令も施設閉鎖命令も行われない。こんな仕組みだから宇都宮のような事件が起り、それが賠償訴訟になる。http://kazu-matsui.jp/diary/2015/03/post-273.html

 (保育それ自体の質を行政が現場で確認できないなら、保育施設における正規、非正規、派遣の割合い、どのくらいの頻度で保育士が辞めてゆくか、その理由くらいは調査し、保護者に発表すべきです。いくら待遇のいい保育園でも、保育士の離職率がとても高い園があるのです。保育士が使い捨てになっている園があるのも原因なのですが、保育の内容、園内の風景に耐えられなくなっていい保育士が辞めてゆく、そんな園が増えています。)

 こんな現状でさらに保育のサービス産業化、一層の規制緩和を進め、総理大臣が、あと40万人保育施設で乳幼児を預かります、と国会で宣言すること自体がおかしい。国家の安全の根幹を見誤っている。

 子ども・子育て支援新制度を進める内閣府のパンフレット、その「すくすくジャパン」というタイトル、「なるほどBOOK」というタイトルの趣旨や思惑に翻弄され、保育園に預けておけば大丈夫、と思ってしまう親たちがたくさんいるのです。

「みんなが、子育てしやすい国へ」というキャッチフレーズが馬鹿馬鹿しく、虚しい。保育の質を整えず、ただ子どもを親から離し保育施設で預かる数を増やせば、それが「子育てしやすい国」だと政府が言う。この国は、そんな国であってはいけない。道徳教育とか愛国心などと軽々しく言わないでほしい。愛国心とは、すべての子どもたちに責任があると人々が感じる心。政府の子育て施策に愛国心が欠落しています。

naruhodo_book

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