米国におけるクラック児・胎児性機能障害(FAS)と学級崩壊

米国におけるクラック児・胎児性機能障害(FAS)と学級崩壊

 

以前、保育誌にも書いたのですが、子育てが人々の生きがいの中心から外れ始めた時に起こってくる社会の仕組みの機能障害を、市場原理と義務教育がどのように連鎖させていゆくか、米国で起きた一つの例を挙げます。

 

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保育の市場原理化、そして規制緩和ともいえる「子ども・子育て支援新制度」が去年施行され、5年後にその影響が小学校へ上がっていく。親の意識の変化も含め、幼児期の体験は数十年に渡って連鎖していきます。

経済優先の施策の影響が、5年後に義務教育の入り口に到達する。そして、制度や仕組み、社会全体に広がった流行によって起こされる波に、学校教育がすでに対処しきれなくなっている。保育や学校、民主主義という仕組みでさえ、親が親らしい、幼児がその役割を社会の中で果たせる、という前提のもとに作られている。親たちの子育てにおける責任意識と協力なしに学校教育を教師たちが維持するには限界があるのです。

「子育ては学校がやってくれて、学校で起きたことは自分たちの責任ではない」と考える親が一定数出てくると、学校は突然その機能を果たせなくなってくる。

新制度が施行され一年、各地で役場の人が言うのです。0歳児を保育園に預けることに躊躇しない親たちが突然増えている。

人間の遺伝子に組み込まれている長い進化の歴史における体験の積み重ねが、突然一部の政治家や学者の乱暴な施策によって壊され始める。経済競争の邪魔だと見なされ「社会の常識が崩されてゆく」。それが、義務教育で連鎖する。欧米の状況と日本のいまの違いは、日本では「自分で育てられるのなら、自分で育てたい」という母親が、15年間まで9割居たこと。(そして欧米では、30年前にすでに、未婚の母から生まれる子どもが3割以上いたこと。)

日本で「自分で育てられるのなら、自分で育てたい」という母親が7割まで減っているのです。豊かさが主な原因とは思いますが、いまの保育施策を考えると、政府主導で減らされているとも言える。人々の意識が弱者を守ることから離れ、それによって社会全体の安心感が薄れ、モラル・秩序が失われてゆく。

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胎内で覚せい剤に犯される子ども達−クラック児

 

(以下は、「胎児性機能障害(FAS)と学級崩壊」も含め、20年前に私が書いた文章からの抜粋です。いまでは当たり前になった、妊娠中のアルコール摂取の危険性についての告知が、日本では、まだされていなかった時でした。保育雑誌に連載し、著書「家庭崩壊・学級崩壊・学校崩壊」:エイデル研究所刊、にも掲載しました。)

 

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母親の胎内で「薬物・覚せい剤」に汚染され、生まれながらに中毒症状を持っていたり、脳障害、機能障害に蝕まれる子ども達の問題は、FAS(後述)と同じように、以前からアメリカで問題になってはいました。しかしその問題がハッキリと実感となって教育界を襲ったのが今から十年ほど前(現在からは30年ほど前)です。

5年前に急速に広がった「クラック」という覚せい剤(通常粉末のコカインを気体にして吸引するドラッグ。覚せい剤の市場を一気に広げる役割を果たした。)、極めて短時間に効果を現し、廉価いうこともあって、あっと言う間にアメリカ全土に広がりました。このクラックに母親の胎内で汚染された子ども達が1990年に5歳になり学齢に達したのです。

1985年ににクラックが最初に広がったニューヨーク、ロサンゼルス、マイアミといった大都市では、その年、こうしたクラックによる機能障害をもった子ども達の第一波が一斉に学校に入学しました。

ある程度予期されていたことではありました。しかし当時、財政赤字削減に伴う賃金カットや、教師の人員削減、音楽や美術の授業の廃止に直面していた公立学校にとって、この新たな重荷は打撃でした。言語障害や行動に異常のある子ども達を何人か一度に教室に抱えた教師たちの多くが、こうした子ども達を扱う特別な訓練を受けていませんでした。しかもクラックの過去6年間における広がりぶりから、クラックの影響による障害児たちは1995年まで増加の一途をたどることが予測されました。こうした子ども達のほとんどが、通常のクラスに入学することになるのです。ニューヨーク市だけをとってみても、このクラック児と呼ばれる子ども達は、9年後には72、000人に達する見込で、この子ども達に対する応対に教師たちはエネルギーを使いはたし、一般の子ども達に対する配慮がますます行き届かなくなることが容易に予測出来ました。

こうした覚せい剤に胎内で犯された子ども達の存在は以前から指摘されていたことですが、それがこの年ほど大きな波として、一気に増えた例は過去になく、あきらかに6年前のクラックの発明普及と直接結びつけて考えることができました。

障害の特徴としては、運動機能障害、行動に一貫性がなく、物忘れが激しいアルツハイマー症に似た症状があったり、感情の抑制が効かず集中力がないなど、FASの特徴に酷似していました。

特別学級に入った子どもの数。(クラックが広がる以前、以後)

ロサンゼルス

1986−87:4370

1990−91:9405

ニューヨーク(一年差で)

1989−90:3645

1990−91:4604

マイアミ

1986:1384

1990:2707

 

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胎児性機能障害(FAS)と学級崩壊

「生まれる前から虐待される子ども達」

学級崩壊について書こうとすると、避けては通れないのがFASの問題です。(以下、当時のアメリカで全国的に放送された特別ニュース番組と新聞報道からの情報からまとめたものです。)

FAS−Fetal Alcohol Syndrome−(胎児性アルコール症−−妊娠中の女性による飲酒が胎児におよぼす様々な影響を総括してこう呼ぶ)が、アメリカで大きな社会問題となっています。

妊娠中のアルコール摂取は、発達障害児の産まれる原因として、最も可能性の大きいものと言われています。様々なお酒の一般家庭への普及に伴い、FASの子どもがいま世界中で増えつづけています。特に若い女性のアルコール消費料が飛躍的に伸びている先進国社会では、FASを囲む状況は深刻なものとなってきています。日本でも密かに増えているのではないでしょうか。

妊娠中に女性がアルコールを飲むと、産まれてくる子どもの知能や運動能力に悪い影響があることを最初に文章にしたのはアリストテレスだと言われています。それほど昔から人類はFASの存在に気づいていました。しかし、アルコールはほとんどの国々で、日常生活、文化と密接に結び付いており、また一定の確率で精神的肉体的障害を持った子どもが産まれることを、人間社会は受け入れてきました。加えて、胎児の脳および肉体の正常な発達が母親の体内において損なわれるFASは、症状の出方に差があるため、現代医学でもなかなか病名が特定されることがありません。妊娠中のアルコール摂取量に関してもどこまでが安全かは、明らかになっていません。

FASが社会問題として初めて真剣に扱われたのは、ジンが急激に普及した十八世紀の英国でした。しかし、胎児が胎盤を通してアルコールにさらされることが、脳障害や肉体的障害の非常に有力な要因となることが、医学的科学的に論議されはじめたのは1970年代になってからのことです。

現在、アメリカで酒類を置いているレストランやバーに行くと、入り口を入ったところに、「妊娠中にお酒を飲むと、障害児が産まれる原因となります。」という政府による強い警告が必ず貼ってあります。 母親が、妊娠中にお酒を飲まなければFASは防げるからです。

アメリカでいま、自分の子どもがおかしい、普通ではないと思う、でも何がおかしいのかわからない、という親達が増えています。

知能の遅れ、自制心に欠陥がある、集中力がない、落ち着きがない、突然暴れだす、奇声をあげる、友達が作れない、作ろうとしない、抽象概念がわからない、危険性を認識できない、読み書きが優れているのに時間の概念がわからない、原因と結果、物事の因果関係が理解できない、想像する能力がない、熟睡できない、食欲がない、運動能力が発達しない。専門家による報告、医学書に書かれているFASの症状だけでもこれだけあります。

妊娠中のどの時期に、つまり胎児のどの部分が発達しようとしている日に(または瞬間に)、母親がアルコールを飲むかによって、FASの症状はまったく異なってくると言われています。妊娠45日目に母親がアルコールを飲めば、45日目に発達しようとしている能力、器官に影響が現れるのではないかと言われています。妊娠初期は顔を形作る時期といわれていますが、脳は妊娠期間中、常に発達を続けます。そして母親がアルコールを飲めば、それがまんべんなく子どもの脳まで回るというのは疑いのない事実なのです。

(FASを肉体的特徴で見分ける手段として専門家が使っている方法に、目と目の間隔と眼孔の長さのバランスを計る方法があります。また上唇が薄く、鼻の下が平たく広いというのもFASの特徴と言われていますが、これらの身体的特徴は、その調査がアメリカで行われているものですので、アジア系の人種にそのままあてはまるものではない可能性もあります。)

現在アメリカで特に問題となっているものは、症状として際立った肉体的欠陥が見られず、子どもの行動に異常が出る種類のものです。この種のFASは、その原因を後天的なもの、つまり成長期の環境、特に親のしつけの問題と勘違いされやすいというやっかいな問題を抱えています。(これは裏返せば、FASが社会的に知られれば知られるほど、後天的、環境的原因を持つ子どもの問題行動が、FASつまり先天的なもの、治癒できないものとして片付けられ、親達のより一層の子育て放棄を生むという危険性をも意味しています。)

妊娠中にアルコールを大量に飲む母親は、出産後も良い母親ではない場合が多いため、FASの子どもの多くが、その行動を、劣悪な家庭環境の結果とみなされてしまいがちです。その症状の多様性、そして後天的なもの、しつけの問題と見なされやすい周囲の環境によってFASは長年ベールに包まれたままでした。それが最近になってにわかにクローズアップされてきた原因の一つに、アメリカにおける養子縁組みの普及が上げられます。

 

「養子をもらった親達の悲劇」

子どもが出来ない、出産を体験したくない、結婚したくないけれど子どもはほしい、養子縁組みを希望する親達の理由は様々ですが、その多くが経済的に裕福で、子どもを育てることに熱意をもった、良い親になろうという意欲のある人達です。しかし皮肉にも、もらわれる子ども達の多くが、子どもを捨ててしまったり、産んだあと引き取らなかったり、母親が親権を放棄した結果施設などに預けられた子ども達、子育ての意欲のない母親によって産み落された子ども達です。子育てに意欲を持たない母親の子どもが、意欲を持っている別の大人に渡され育てられる。この一見合理的にみえる制度が、いまアメリカ各地で様々な悲劇を起こしています。

子どもを養子にもらって、さあがんばって立派な子どもに育てようと、幸福感に浸っている。ところがしばらくすると、その子どもが間違った行動をしてしまったり、言うことを聞かなくなる。一体自分の育て方の何がいけなかったのだろうと親達は戸惑います。そんな状況がアメリカのあちこちで起こっています。

悲劇の原因は、子どもが実の母親の体内で過ごす10ヵ月にあります。子育てに意欲を持たない母親の体内で、すでに子育ては始まっていたのです。

現代社会はまさにアルコール漬けの社会です。アメリカにおけるアルコールが原因の死は、毎年10万件といわれ、覚せい剤による死亡数よりはるかに多い数字です。薬物以上にアルコールは社会にとって危険なのです。1800万人がアルコールで問題を抱えていて、5人に2人が一生のうちにアルコールが原因の事故に遭遇すると言われています。

そういう社会状況の中、産んだ子どもを自ら放棄してしまう母親がアルコール依存症である確率が非常に高い。アルコール中毒という問題を抱えている母親は、自分の世話が出来ない大人達と言ってもよいでしょう。

FASではないかと診断された養子の産みの親を追跡調査していくと、しばしばその母親が、妊娠中重度のアルコール中毒患者であったことが判明します。中には病院で子どもが産まれたときに、母親が酔っ払っていたというケースさえあります。

500人に1人と言われているFASの子どもが、養子縁組みをした子どもに集中したことで、妊婦によるアルコール摂取の危険性が改めて社会に大きく報道されたのです。

 

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アメリカインディアンとFAS

 

もう一つ注目すべきことは、アメリカインディアン(ネイティブアメリカン)の中にFASが多いという事実です。

アメリカインディアンはアルコール中毒患者が非常に多いという歴史的特徴を持っています。大自然と一体になった精神文化を長い間維持してきた人達が、現代社会に適応出来なかった結果といえるかもしれません。アメリカの奴隷史を見ても、インディアン達だけは奴隷に出来ませんでした。特有の自由な精神が奴隷という立場に適応できず、無気力になり自ら死を選ぶようなことがよくあったそうです。居留地をあてがわれ、有り余る時間と少しの金を政府から毎月与えられ、子育てと伝統的生活様式、価値観を否定された部族が、アメリカ社会に背を向け、アルコール依存症になってしまうのかもしれません。インディアンが集中して住んでいるニューメキシコ州のギャロップ市におけるアメリカインディアンたちのアルコール中毒率は、全米平均の6倍になります。 そうしたインディアンたちの子ども、インディアンから貰われた養子の間にFASが集中しているのです。

アメリカにおける最近のLearning Disabilities(日本でLD児と呼ばれていますが、直訳では、「学ぶ能力に欠けている子ども達」)の急増が、FASと判断されつつある背景には、こうした母親の妊娠時の行動調査があります。そして、FASの子どもを知らずに授かった親達は、やがて育児に疲れ、子育てを放棄し、多くのFAS児がホームレス(路上生活者)になったり、売春や犯罪に関わったり、犯罪の犠牲になっている。

FAS児には、盗むという概念がわからない子どもがいます。学校で人のものを取ったり、嘘をついたり、十代になると社会との摩擦が頻繁に起こり始めます。親は子どもを叱ります。ここでの悲劇は、そうした行動の原因が、子どもを叱ったからどうなるというものではないところにあります。

FAS児には、誰を信用していいかわからないといった症状の子どもがいます。そうした子ども達は、性的いたずらの対象にされる場合が少なくありません。

FASの研究者は、非常に不自然な犯罪を犯した受刑者、突然人を撃ってしまい現場からまったく逃げようとしなかった殺人犯などを、刑務所で調査した結果、FASと認定できる犯罪者がかなり含まれているとの結論を出しています。FASは脳障害であり、犯罪者に善悪の判断を下す能力が備わっていない場合や、突発的に判断能力を失ってしまう状況が起こりうるのです。

東京消防庁の調査(20年前、執筆当時)では、飲み過ぎによる急性アルコール中毒で病院に運ばれる女性が急増しているそうです。その半数が二十代の女性です。計画的な出産が減ってきている現在、妊娠を知らずにお酒を飲んでしまう女性もいるでしょう。FASの危険性がもっと社会に認知されてよい時代に入っていると思います。せめてアメリカのように、お酒類を置いている全ての店やレストランに警告が出るくらいは早急になされなければならないでしょう。広く警告が発せられているアメリカにおいてさえ、この問題は増加の一途をたどっているのです。

家庭におけるしつけの問題が叫ばれ、落ちこぼれを拾いあげる態勢の弱さを学校教育が問われている現在、FASの問題に社会全体が取り組まなくては、すべてが後手に回る。今のところFASに治療法はありません。不治であることを親に宣告することが、果たして子どものために良いのか、という難問が必ずクローズアップされてくるでしょう。

自分のしつけの問題として終わりのない苦闘を続ける親達には、原因が親達の人間性に起因するものではないと知ることは、ある意味で救いになります。しかしそれは同時に、妊娠中の自分の行動が、我子に取り返しのつかない傷を与えてしまった、という現実を知らされることでもあります。こうした状況を招くことを予想しながらも、この問題には正面から取り組まなければなりません。なぜならFASは予防できるからです。

妊娠中にお酒を飲まなければいいだけなのです。

 

(日本の酒造業者は、コンサートホールなどを建てて、文化に貢献していると言いますが、それよりも妊娠中のアルコール摂取の危険性についてのキャンペーンを自ら率先して行ってもらいたいものです。日本政府が、訴訟国家アメリカで、ここまで徹底されているレストランやバーにおける危険性の告知をしないのは、業界からの圧力によるものでしょうか。マスコミがこの問題を取り上げようとしないのは、大口スポンサーである酒造業界への配慮でしょうか。しかしFASはすでにその存在が充分証明されているのです。アメリカでは学級崩壊の引き金となっているのです。お酒は文化の一部です。人間関係におけるその役割は重要です。しかし、最近の日本における女性による飲酒の増加は、将来の教育システムの存続を考えると、かなり危険なところまできていると思います。LD児と呼ばれる子ども達の増加が、幼稚園保育園でハッキリ現れ始めてからでは手遅れです。)

(FAS、クラック児、PCBの胎児への影響、ウイリアムス症。染色体やDNAと機能障害の関係はまだ未知の分野です。しかし、防げる方法があるのなら早めにやっておく、という姿勢が大切です。学校は既に様々な問題を抱え崩壊の危機に直面しているのですから。)

ーーーーーーーーーーーーーここから現在に戻ります。

 

アメリカにおけるクラック児の報道でもわかるように、家庭の本来の機能が弱まるほど、義務教育における学級崩壊が子どもの(親子の)人生に及ぼす影響は大きくなる。アメリカの小学生の十人に一人が学校のカウンセラーに薦められて薬物(向精神薬)を飲んでいる。それがないと画一教育・学校教育が成り立たない。そして、このカウンセラー(専門家)が薦める薬物が、将来麻薬中毒、アルコール中毒につながっているという研究もすでに終わっています。それでもなぜアメリカの義務教育が「薬物」から逃れられないか。「家庭」という義務教育を支える基盤が崩れてしまったからです。

学級崩壊は、人類にとって、学校が普及しなければ存在しない新たな問題です。将来への影響、連鎖という視点で考えれば、未知の問題と言ってもいい。学校教育と市場原理が、クラックというちょっとした発明を、とんでもない影響にまで広げる、それが現代社会の特徴です。

FASの問題についても同じことが言えます。人類は、もともとこれほど頻繁にお酒を飲みませんでした。妊婦がお酒を口にする機会にいたっては非常に稀だった。(自然界に存在するものはあったとしても、覚せい剤もまだ発明されていなかった。)そして、ここが問題なのですが、飲酒を薦める「市場原理」がまだ働いていなかった。そういう時代には予測できなかった新たな子育てに関わる問題に、待った無しで、対処しなければならない時代に私たちは生きています。

いまでは日本でも当たり前になり、酒類のパッケージなどには必ず書いてある「妊娠中のアルコール摂取に関する警告」が、アメリカで義務として法制化されてから35年になります。この法律が義務教育を守るためには不可欠という認識が社会全体に生まれ、マスコミも繰り返しそれを取り上げた。日本では、その警告が現れるのが二十年以上遅れました。しかも、いまだに業者の自主的な警告でしかない。いつかは絶対にしなければいけない政府による警告が、国の仕組みの中でこれだけ遅れている。どうしてそうなるのか、国民は考え、マスコミや学者はしっかりその仕組みを調べるべきなのです。

そうした国の姿勢や政府の仕組みが、この国の現在の状況、あり方に、見えないところで大きな影響を及ぼしている。保育の問題もそうですが、その影響の大きさと速さを考えると、政府の施策の進め方、思惑、市場原理、の罪深さを感じます。これからも、教育、保育、福祉、司法、あらゆる分野で雪だるま式に起こる「現在の施策の結果」に繰り返し対処し続けていかなければならないことを考えると、憤りさえ覚えるのです。

なぜ、20年前、学者でもない私がアメリカに住んでいて、簡単に知ることができたFASに関する情報が、警告として共有されなかったのか。当然日本にも伝わっていたはずの情報の共有が、なぜこれほどまでに遅らされたのか。日本がまだ訴訟社会ではないというだけでは済まない、意図的なものを感じ、不安になるのです。

アメリカインディアンが「生きる力を削がれること」で陥った罠に、私たちも少しずつ捕まり始めたのではないのか。

いまの、子ども・子育て支援新制度、11時間保育を「標準」と名付けた施策が、撤回されなければならない日は必ず来るでしょう。それほど不自然ですし、1年目でこれほどの矛盾や問題が噴出している。「保育は成長産業」などという偏った閣議決定に煽られ、利潤を目的とした保育が日常になり、事故が増え、園や自治体が繰り返し訴訟の対象になる可能性は充分にある。そうなってほしくはないですが、日本が、アメリカ程度の訴訟社会になれば、新制度自体が訴訟の対象になり、国が負け続ける可能性は十分にある。この歪んだ施策の転換か撤回が、政治家の優柔不断さでさらに遅れ、十年後になれば、この国の魂のインフラはより深く傷つき、学校教育が修復不可能な状況に追い込まれてゆく。それが見えるのです。

政治家は真面目にこの国の形について考えてほしい。安易に「愛国心」などと言う前に、もっとさかのぼって家族の形、幼児の日常のことを考えてほしい。この国の未来と人々の生活に、自分たちの閣議決定が大きな影響を及ぼすことに、慄然としてほしい。

 

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