IAMのライブ配信演奏に参加します。京都からです。

IAMのライブ配信演奏に参加します。京都からです。

thumbnail

https://www.ragnet.co.jp/livespot/25323が申し込みページです。

コロナ禍で、世界中でミュージシャンが演奏する機会を失ってしまい、どうしよう、どうしよう、という感じです。何しろ集まってはいけないのですから、こんなことが起こるんだ、と思いつつ試行錯誤をしています。インターネットが普及して、しかもその画質音質がとても良くなり、最近ライブ配信という手段も使われるようになりました。

今回は、私にとって初めてのライブ配信、京都からのIAMの特別ライブに参加します。同じ会場で前日にやるSayaさんのライブにも参加します。https://www.ragnet.co.jp/livespot/25322

 

images

最近、ユーチューブで色んな音楽に触れる機会が増えました。検索すると、昔一緒に演奏した人たちの映像がたくさん出てくるのです。以前、自分が演奏した音楽と30年ぶりに再会したりできるのです。ライ・クーダーとやったSouthern Comfortという映画のサウンドトラック、音楽全体で30分くらいしかなかったため一度もCDやLPにならなかったのですが、検索したら出てきました。

ザキル・フセインというタブラ奏者がいるのです。

タブラはインドの太鼓。私が彼の演奏を初めて見たのは46年前、インドのデリーで、シタール奏者のビラヤト・カーンとのセッションでした。個人的にはシタールではニキル・ベネジーが好きで、もうずっと前に亡くなっているのですが、ザキルとの演奏映像がありました。そしてビスミラカーンというシャナイ奏者が好きです。カルカッタに居た時コンサートのハシゴをしていました。

インド音楽は即興演奏が主体ですから、タブラ奏者が誰になるかで随分グルーブ感が変わります。その頃は、サンタプラシッド、カナイダッタ、ザキル・フセインが三者三様で、面白く、のちに私がセッションをしたドラマーで言えば、ビンス・カリユタ、ジョン・ロビンソン、ジェフ・ポルカロの違いのような感じ。

人間には持って生まれたグルーブ感があって、お互いに影響し、お互いの音色を醸し出し合うのでしょう。今回京都で一緒にやるIAMもそのいい例です。尺八とディジュリドゥ、そしてピアノとパーカッション、楽器自体が三者三様の歴史を持っていて、人類のたどった異なる道筋がインターネット上で重なり合います。

インドの本式のコンサートは夕方に始まり、翌朝終わったりして、その場合、深夜と夜明け前に真打ちが登場します。その時間帯に、いいラーガ(音階:月のラーガ、夜明けのラーガなど)があるからです。2千人くらいいた観客も明け方にはすっかり減ってもう三割くらいしか残っていません。それで構わないのです。人間が大自然(神)と交わした取り決め、約束を守っている。

過去の約束や束縛に捉われなければ、もっとたくさんの人たちに聞いてもらえるし切符もたくさん売れたかもしれない。いえいえ、合理的とか自由とか言って、損得勘定で物事を考えてはいけないのです。

美しさは、度々最初の約束事の中に存在するのです。

インドで色々あたりを見回していた私はその頃二十歳、ザキルも同い年くらいだったでしょう。舞台と観客席に分かれていましたが不思議な出会いでした。10年後に彼の父親アララカとシタール奏者のラビ・シャンカルのコンサートで共演することになるのですが、当時は知る由もなく、ただただ彼の手の動きとそのリズム感の確かさに魅了されていたのです。その後、ラビジのコンサートでザキルとも共演しました。ジョージ・ハリソンがプロデュースしたラビ・シャンカルの全集にその音源が残っています。

モーリス・ジャール(ドクトルジバゴ、アラビアのロレンス、インドへの道ほか)の作曲で、「ジェイコブズラダー」というマニアックで伝説的なSF映画でもザキルと共演しました。ザキルのタブラ、バイオリンのL.シャンカルとブルガリアンコワイア、そして私の尺八という時空を超えた不思議な組み合わせでした。

ザキルはその絶対的な才能で不思議な糸を繋いでいきます。様々な分野の人たちとのセッションがユーチューブに載っているのですが、リズム、鼓動こそが生きる力で、それは常に鳴っているということがよくわかります。そうしたセッションの一つに、ダファー・ユセフというウードゥ奏者とのコンサートがあって、リンクを下記に張りましたので、よろしければ時間がたっぷりある時に聴いてみてください。(時間がたっぷりある時に……。)

人間は四歳の時の自分を手離してはいけない、そんな風景です。言葉を発しないコミュニケーションによってもう一つの次元を織り成す人間の魂が常に存在し、「絆」はこの次元で私たち自身が創造し続けている。そんな感じです。IAMでもそんな風景をつくりたいと思っています。

Dhafer Youssef, Ustad Zakir Hussain, Husnu Senlendirici – Sounds Of Mirrors Live:

https://www.youtube.com/watch?v=4Elh8WytKfA