一ヶ月後の謝恩会

 若手園長から聞いたのです。一生懸命やっている男性園長です。
 「卒園すると、親は本当によく保育園に感謝する」と嬉しそうに言います。学校に入ると、保育園のありがたさがわかる、今までどれほど親身にやってもらったかが見えてくるのだそうです。
 なるほど、という指摘です。(学校と保育園は、その趣旨が違う。教育と子育てでは、その深さが違う。)
 ですから、卒園して、一ヶ月後に謝恩会をするそうです。そろそろ親たちが保育園の価値に気づき、あの頃を懐かしく思い始めている。しかも学校へ行くようになって新たな悩みを抱えている。相談相手がまだいない。
 そんな時に、これまで子どもを育ててくれた人たちに再会すれば、きっと一生の相談相手に気づくかもしれません。親同士も、もう一度お互いの存在に気付づき合う。お互いに相談し始める。親身になることの幸せに気づく。
 お互いの子どもの小さい頃を知っているということは、親身になれるということ。人類はそういう人間関係に囲まれて何万年もの間、人生を過ごしてきた。子育ては、親身な相談相手がいるかいないかが重要で、相談相手からいい答えが返ってくるかどうか、ではないのです。
 一ヶ月後の謝恩会が、保育園の存在を永遠にしてくれます。
 
 (人類に必要なのは「相談相手」。時にそれは、お地蔵さんだったり、盆栽だったり、海や山や川だったり……。0歳児が、その橋渡しをするのです。)
 
 (一ヶ月後の謝恩会が、DVや児童虐待に歯止めをかけるかもしれない。学級崩壊やいじめを減らすかもしれない。教師たちの精神的健康を保つのに役立つに違いない。それが当たり前になるような環境づくりが、社会を温かくするのだと思います。)
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