夜間保育が広がらない背景

「夜間保育が広がらない背景?」

毎日新聞4.1夕刊。夜間保育特集。夜間保育が広がらない背景に「夜に子供を預けて働くことに対してまだ社会全体で抵抗感があり」と夜間保育園連盟会長。

「抵抗感がなくなること」ことこそが怖いのです。保育園をビジネスにしようとする人たちは、人間は、特に母親は、乳児を知らない人に手渡すことに躊躇する、という人間性の本質とぶつかることになる。女性の社会進出とか平等という言葉を使って、それが正しい流れ、意識改革のように言うのですが、そこに確かに「人間性」との闘いがある。

本当の意味での「男女共同参画社会」の原点は「家庭」であって、それは「子育て」を中心に育まれるモラル・秩序の原点でもありました。その「原点」が先進国でいま揺らいでいる。(「捨てられる養子たち」http://kazu-matsui.jp/diary2/?p=2063)子を産み、子を育てるという面では世界的に見てもしっかりやってきた日本も、男女共同参画「競争」社会という理念によって、少しずつ、土台から壊されようとしている。

男女共同参画は、本来、性的役割分担によって生まれる調和だったはず。人類が存続するために最低限必要な男女共同参画、「子をつくること」「子を育てること」は、多くの人が性的役割分担に幸せと安心を感じることで成り立ってきた。生物が雌雄を得た時から始まったジェンダーという取り決めは、宇宙(神?)から与えられた「役割分担の薦め」だったはず。

欧米の現状を見れば、男女共同参画「経済競争」社会を無理に進めるによって、結果的に家庭崩壊による格差が広がり、平等とは逆の方向へ社会が向かうのはすでにわかるはず。子育てという人間性の中心が揺らいで、反作用のように始まった強者優先の差別主義的社会への回帰は、すでに欧米で危険な領域に入っています。平等という理念が都合のいい絵空事だったことは、去年の米国大統領選を見れば明らかだと思います。平等という概念は、経済競争への参加者、ネズミ講のネズミを増やす役割さえ終えれば、相手にされなくなる。その先に、本来の強者に都合のいい仕組みが見えてくる。

日本は、夜間子どもを預けることに「抵抗感」を持つ国であってほしい、と思います。

冒頭の発言にある、「社会全体で抵抗感」は人類が持つ抵抗感、人類が人類であるがゆえの抵抗感なのです。

 以前、国が薦める子どもショートステイについて書きました。http://kazu-matsui.jp/diary2/?p=1150

 「育児疲れ、冠婚葬祭でもOK、二才未満児一泊五千円、一日増えるごとに二千五百円、一回7日まで、子育て応援券、使えます。」杉並区のチラシです。

預け先の乳児院や児童養護施設なども質が疑問視されているのが現状です。職員の待遇改善が置き去りにされたまま、子どもを「負担」と考える、親に成りきらない親たちによる児童虐待が増え、負担は増すばかりです。それに加えて、冠婚葬祭でもOKのショートステイ。

何よりも、「幼児たちの気持ち」がこうした施策を薦める要素には入っていない。だから、いい指導員たちが精神的にも、肉体的にも、疲れ果てて辞めて行くのです。

保育を市場原理にまかせ、保育を成長産業としてとらえようという、国の方針が、とんでもない意識改革を進めています。それが、この夜間保育園連盟会長の発言になって現れています。

一生に一度も結婚しない男性が3割に迫るといいます。男女共同参画経済「競争」社会を進めることで、本当の男女共同参画社会が壊れてゆく。もういい加減に気づいてほしいと思います。本当の男女共同参画社会がなければ、福祉も学校も維持できない。

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こんなツイートがありました。

『「親との愛着」これが大切なことは言うまでもないですが、なぜ「愛着は親でなくとも問題はない」という意見になるのか分かりません。一番大切な0歳児~2歳。子どもは大好きな親や家族を見、言葉を覚え、自分という存在が分かってくる時期。乳飲み子だった赤ちゃんが1歳半には、歩いて話し出します。』

「愛着は親でなくとも問題はない」と言う時の、「問題」の定義、その次元、それをどのくらい俯瞰的にそれを見るかが曖昧なまま議論や施策が進んでいるのです。子どもの人生、育ちを考えれば、出会う人間との相性や運が良ければ「問題」ないのかもしれない。しかし、親子の愛着、絆が基本になる「家庭」が人間社会の土台であることは重要なのだと思います。

子を産んだ親が、つまり出発点にそこに居た人が、親子、血のつながりという特別な概念や常識(思い込み)に後押しされて、絆と安心感を双方向に育ててゆく。そのプロセスこそが幸せや自己肯定感につながってゆく。それで長い間やってきたのです。

人間が哺乳類である限り、必要最低限の営みであった「子育て」が「愛着は親でなくとも問題はない」などという言葉で薄れていったらどうなるか。もうわかっているのだから、親子を引き離すことを目的にした施策は止めてほしい、と思います。

201509291028000

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