待機児童対策で「質」置き去り

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『待機児童対策で「質」置き去り: 小規模保育3歳以上も 都知事が規制緩和要望』

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201609/CK2016091002000114.html

新聞もやっと指摘し始めましたが、政治家たちによる、幼児たちの生活や願いを考えようとしない規制緩和施策が次々と続きます。

役場の人が、私に言うのです。

最近、自分の子どもを行かせる保育園を、前もって見学にも行かない親が増えている。0、1歳児を預けることに躊躇しない親が増えている。そして、園に要望や不満があると、園に直接言わずに、すぐ役場に言いに来る親が増えている。

これが、待機児童がたくさんいて、どこでもいいから保育園に入れたいという地域の話だけではない。地方の、待機児童もいない市でも、同じことが起こっている。数的に言えば一部なのでしょうが、政治家たちの経済主体の仕組みが親たちの意識を変え、こうした親たちの意識の変化が、政治家たちの施策を後押ししているような気がします。

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以下は、現場で矢面に立っている役場の人からのメールですが、状況は切実です。新制度元年、去年いただいたメールですが、今年は一層、全国で問題が広がっているので、再掲します。こんなことをしているから、児童虐待や家庭崩壊が増えるのです。早く方向転換をしないと、児相も養護施設も、保育も学校も対応できなくなります。すでに、1年目でそうなっている。

 

役場の人からのメール

今週の水曜日から、来年度の入園受付が始まりました。連日、長蛇の列です。昨年よりまた一段とお母さん達が殺気だってるような気がします。なぜか?皆さん、必死なのです。待機児童になったら、どうするの?!会社を辞めろというの?!と、こんな調子です。

また、年々乳児の申込みが急増しています。待機児童になる確率を下げるため、少しでも早く入園申込みをする傾向が加速しているのです。受付をするあいだ、こどもを預かっているのですが、(その子の発達をみることが目的でもある)、生まれてはじめて母親から引き離される時の乳飲み子の泣き声、受付会場は凄まじい状態になります。

気になるのは、こどもに無関心な親が増えていること。親心の喪失も加速化し、養育の主体性も欠落しています。入園を希望する保育園選びをしていて、受付の最中に夫婦喧嘩さながらの光景もあります。(夫婦の絆も喪失?)

こどもを慈しむという人間本来の感情でさえ、失ってしまったのでしょうか。

1日10時間の入園受付をしていても、まだ終わりません。土日も受付をします。結局のところ、保育園を新設すればするほど、待機児童の掘り起こしになることが、新年度の入園受付で確証できたのですが、誰も増設に異論を唱える人はいません。

認可園増設=待機児童減少

愚策です。

いままで拒んでいた株式会社も公募対象として決まりました。この国の子育て政策に危惧する者は、行政の中にも官僚の中にも、皆無なのかもしれません。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーここから私です

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マスコミや教育という仲介者が加わり、親の意識の変化と政治家の経済優先の施策は相互に連鎖し、保育の質、子育ての質に影響を及ぼしています。しかし、質の低下を止めるとしたら、やはり親の意識が出発点になるしかない。

最近、子どもが言うことを聞かないと、保育士のせいにする親がいます。反対に、それを親との愛着関係のせいにする保育士がいます。たぶんどちらも正しいのです。逃げられないのはどちらですか、ということなのです。保育士は嫌になったら辞めてしまえばいい。親はそうは行かない。預けた方の意識がまず最初に幼児優先に変わっていかないかぎり、保育崩壊の流れは、変わっていかない。

どうしたらいいのだろう、と考えます。最近は状況が進みすぎて、中々いいアイデアが浮かびません。親の一日保育士体験も効き目がありますが、通過点での気づきであって出発点にはならない。やはり、中学生くらいから、もし将来子どもを授かったら祝いましょう、誰かに預かってもらうことになったら、感謝しましょう、と説明し、保育士体験で幼児と過ごす時間の素晴らしさ、自分自身の心の仕組みに気づかせてゆくしかないのかもしれません。

(以前、書いた文章ですが、中学生は中々すごい人たちなのです。彼らの感想文に希望が見えます。これは、出発点となりうる。ここから新たな流れは生まれる。そんな未来を感じ、少し嬉しくなるのです。以下のリンクで彼らの感性が読めます。)

 

『中学生は理解してくれる』

 http://kazu-matsui.jp/diary2/?p=726

『中学生の保育士体験/「あの人変」/役場の人からのメール』

http://kazu-matsui.jp/diary2/?p=260